*SHINE ON*
向こうは、私よりも下に座っている為

上目遣いでこちらを見ている。

泣いて、真っ赤な目で。

私は、その瞬間。動けなくなった。

黙って見ている私を見かねたのか

「うっ・・・あのぅ・・・」

と、消え入りそうな声で言った。

「えっ、は、はぃ?」

私は、我に返り必死に返事をした。落ち着け私!!

「あのぅ・・・ぐすん。ティッシュとかなんか持ってないですか?
 えっと・・・鼻水が・・・僕も持ってたんだけど。全部使っちゃって」

と、カラのポケットティッシュの袋をこちらに見せた。

「あっ・・・えーっと・・・」

よーく、考えたら。私のコートのポケットには

財布・携帯・ハンカチしか入っていない。

「えっと・・・ないなら良いんです。大丈夫です。すみません」

そう言って、彼は上着の袖で鼻を拭こうとした。

子供かっ!!と心の中でツッコミをいれ

気付いた時には

「ちょっと待って!!」

と、無意識に大声で彼を止めていた。

彼は、ビクッと驚いた目で、手の動きを止め

こちらを窺うように見ていた。

「あっ、えーっと・・・ハンカチならあります!
 もし良かったら、使って?」

そういって、私はポケットからハンカチを取り出すと

彼に握らせた。

「えっ、でも・・・」

明らかに、動揺している彼を置き去りに

私は、駆け出した。

「あぁ~~何してんだ私~~!!
 いい年して、見ず知らずの男にハンカチあげちゃうなんて!
 あれ結構気に入ってたのになぁ~~!」

なんて思いながら走っていると

「ちょっ・・・ぐすん。ま、待って・・・」

「え?」

立ち止まって、振り返るとさっきの彼が目の前にいた。

「はぁはぁ。ダ、ダメだって。こんな可愛いハンカチ。僕、受け取れません」

「へぇ?」

私は、力が抜けてしまった。

受け取れませんって・・・なんなんだ??

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