桜咲くころに
「どう…したん?星華…は…?」
入り口に立ち止まるうちに、星夜は目を丸め話し掛けてきた。
うちは、星夜にどこから話そうか。
何から話そうか。
そんな戸惑いを隠しきれずに、話始めた。
「星華・・・。な・・・。」
「待てや。」
言葉を遮られたと同時に、うちの前に、少し焦げ目の付いた、細いけど力強そうな手が飛び出してきた。
その手はそのままうちの、口に向けられ、口を塞がれる。
星夜の俯く姿を見て、一体何が起きたのか、分からなくなった。
星夜は星華のこと、知りたいの?
知りたくないの?
「・・・・・っん・・・・。ね・・・。」
星夜は、強い力でうちの口を塞いだから、うちは息が出来ず、指と指の隙間から、声を漏らす。

‘バッ!’

途端に、星夜の手が口元から離れ、息をする。
立ち尽くす二人・・・。
星夜の手は、暖かくて空気との温度差に、口元がスゥスゥする。
「ごめん・・・・。」
未だ俯いたままの星夜は、短く言った。
「ううん・・・・。どうしたん?」
うちは星夜に、軽く問いかける。
短い沈黙。
星夜は、ベットに指を指し、‘座って’という、合図を送る。
俯いたまま指す星夜の指は、微かに震えていて、その力強そうな腕とは別に、とても弱々しく見えた。
うちは、星夜の言うままに、ベットに座る。
さっき、うちはこのベットに寝ていて、まだその暖かさが微かに残っているような、気がした。
星夜はベットの前に、1つ椅子を持ってきて、そこに座る。
向き合わせ状態。
でも、星夜は下を向いたままで、顔が見えない。
うちも、顔に右手を当てているため、向こうから、顔が見えないであろう。
それから続く長い長い沈黙。
うちには、何時間にも、何日にもにも思える程長い沈黙だった。
「俺さ・・・・。」
星夜が先に口を開いた。
それと同時に、いくつかの不安がうちの、脳裏を過ぎる。
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