桜咲くころに
「キャ!」
あぁ。
ついに転んじゃった・・。
膝鼓動の先っぽから、赤い液体が染み出ている。
恥ずかしい。小さな子供みたいだ。
今のうち・・・ちょっと半泣きかも・・・。
そんなこと考えて、床にヘタレ込むうちの前に、‘すっ’と手が伸びる。
「ごめん!桜!大丈夫やった?!」
とっさに伸びた手のひらに、自分の手を重ねる。
「・・・・暖い・・・。」
「えっ?」
星夜の驚いた顔を見て、凄いことを言ってしまったと、じわじわと後悔が溢れ出す。
目を見ることが出来なくて、思わず前髪で顔を隠す。
ちょっと上目使いなんかもしてみたりした。
前髪の間から星夜を見ると、星夜は腹立たしいくらい、ケラケラと笑っている。
「お前何言っとんの!」
恥ずかしさでいっぱいになったけど、星夜があんまりに笑うもんだから、少し強い目線で睨み付けてみた。
「・・・うるさいわ・・・。」
でも、うちの声は、涙混じりでフルフル震えている。
恥ずかしすぎて、もう消えたい。
「カワイ・・・。はい、立ってやぁ。」
ニコニコの星夜は恥ずかしいことを、サラリと言う。
うちの顔は、今世紀最大と言っていいほど、真っ赤だと思う。
「・・・・・。と・・・・。がと・・・・。」
星夜の言葉を通り越すこともできす、うちは立ち上がりながら、お礼を呟く。
‘すくっ’と立つと、ちょうどしゃがんだ星夜と同じ目線だ。
改めて、星夜は男の子なんだと思い知らされる。
「なんねん。なんちゅうとるか、分からんわ。」
きっと聞こえてたはずなのに~・・・・。
「あ・・・りがと・・・。ちゅうとるやろが・・。」
下を向き、もう一度囁く。
「『あ』??なんねん。聞こえへんわ。」
わざとだ。星夜はうちの困った顔を見て楽しんでるんだ。
「もうええわ。それよか、なんで星夜はうちをここに連れてきたん??」
さっきまで、余裕ばかりかましていた星夜の顔が、‘はっ’と赤くなる。
< 26 / 31 >

この作品をシェア

pagetop