裸足のシンデレラ
「っしゃー始めるぞ。」


…入ってきた。
そして彼は入ってくるなり私の存在を目で確認する。
前を向いてはいるから目は合う。



「よしっ。いるな。」



『誰が』と聞きたくなるほどに主語がない。
そんなのもおかまいなしに彼の授業が始まる。
彼の英語はとても流暢で、聞いてる分には本当に心地良い。
声も甘い顔に似合わず低く、顔が顔だけに人気もあるらしい。
そのことに関して興味はほとんどと言っていいほどないけれど。



「んじゃ、そのページの下の問題解いて。」


…彼が机の間を歩き始める。
新人のくせに人気があるらしく、みんな割と前の方に座ってる。
だからこんなに後ろで端に座っているのなんて私だけ。
それなのに彼は私の方までやってくる。
私が彼の指示したところをやっていないのを知っているくせに。





「たまにはやれよな、里穂。」


私だけに聞こえる声でそう呟く彼。


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