裸足のシンデレラ
「わんわんっ!!」

「え…?」


向こうからミニチュアダックスフントが走ってくる。
私はゆっくりとしゃがんだ。
ダックスは私の手をぺろぺろと舐め、尻尾をブンブン振っている。


「…首輪してるのね。飼い主さんはどこ?」


犬に問いかけても返事がないことは知ってる。


「名前…えっと…メイ。メイちゃん。
向こうから来たってことは、ご主人様はあっちね?」

「わんっ!!」

「里穂…やべぇ…ご主人様ってもう1回言って?」

「別に貴也に向かって言ったわけじゃないわ。勘違いしないで。」

「うわー…犬には優しいのに俺には冷てぇ…。」


私は彼の言葉を無視し、メイを抱きかかえた。
首輪に名前が彫ってあった。
…住所まで書いてあれば良かったのにとも思う。

抱き上げたことによって、顔まで舐められる始末。
でもそれを不快だとは全く思わない。


「…本当に人懐っこいのね。」

「わんっ!!」

「人懐っこいのは…可愛いわ。すごくね。」


これはメイに言ったのか、はたまた…。
そんな私に気付かずに、メイはただ私の腕の中で少し大人しくなって身を預けてきた。


「…本当に…可愛い。」


「すみませーん!!その犬…。」


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