裸足のシンデレラ
「あなた…何言って…。」

「モデルとしても最良、彼女としても最良だと判断してお前に頼んだ。
今は俺のモデルだけど、いつかは彼女になってもらうつもりだからそこんとこよろしくー。」

「なっ…何を…。」


カシャッ…


返事の代わりに帰ってきたのはシャッター音。


「照れた顔、可愛すぎてやべー。」

「帰るっ!!」

「メシ食いに行こうメシー。」


…妙に浮かれた声が返ってきた。
なんだかすごく不覚だ。
自分らしからぬ表情を、写真に収められてしまったような気がして。


「はー…すげー満足。
すっげーいい写真が撮れた。今回の手ごたえははんぱない。
ありがとな、里穂。」


そのくしゃっとした笑顔に、一瞬だけ胸がドキンと高鳴ったのは、きっと私が動揺していたからだ。

その後のランチの味をはっきりと覚えていないのは、男に不慣れな私にとってはめまぐるしすぎるくらいのことが立て続けに起こって混乱していたからだ。

彼の運転する車の助手席に座って、私はひたすらに頭の中でそう繰り返していた。


気付けばいつの間にか、夕方になっていた。



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