裸足のシンデレラ
「家まで送る。どこ?」

「…駅まででいいのに。」

「暗いし、危ないじゃん。
それに…。」

「?」

「もう少し一緒にいたいし。」


…どこまでストレートでいれば気が済むんだろう、この男。
私は…男に慣れていないと言ったはずなのに。


「…○○町5丁目。」

「りょーかい。」


車が走り出す。
何を言えばいいのか分からないでいる私を乗せて。


「ホントに今日はありがとな、里穂。
すっげーいい写真が撮れたし、その前に…すっげー楽しかった。
お前は…楽しかった?」

「…そうね。久しぶりに楽しかった。」

「そっか。良かった。」

「…写真。」

「ん?」

「出来上がった写真、見せてほしい。」

「もちろん。つーかコンテストに出すし。」

「そうなの?」

「あれ?言わなかったっけ?
このコンテストにはテーマがあって、そのテーマに即した写真を募集してんだ。
このコンテストはさー若手の登竜門って言われてて、ここで賞取らねぇとカメラマンとしての先はねぇんだって。
でも、取れる気がする。」

「え?」

「本当にテーマ通りだったから。」

「…テーマは何?」

「『大切なもの』」


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