裸足のシンデレラ
「大切なもの…?」

「そう。だからお前。
お前の固い表情から柔らかい表情になるまでの過程が撮りたかったんだ。
…無意識だと思うけど、犬抱っこしてるときとかすっげー笑ってたよ?」

「え…?」

「ホントは俺といるときにもああいう顔してほしかったってのが本音だけどー…
まぁ徐々に、な。
って着いた。この辺?」

「あの青い屋根の家。」

「了解。もう覚えた。」

「そう…。」


家の前で止まる車。
私は彼の方を向いた。


「…今日はありがとう。本当に楽しかった。
じゃ…写真楽しみにしてるわ。」


そう言って車を出ようとした瞬間だった。
ぐいっと右腕を引かれ、座席にストンと腰が落とされる。


「え…?」











その後は声にならない。


優しい唇が…私の唇に重なっていたから。



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