裸足のシンデレラ
そっと離れる唇。
彼の目に映る自分が見えるほどに近い距離。


「…最後の最後にそんな顔で笑うとか…普通に限界。」

「人のファーストキス奪っておいて、意味が分からないんですけど。」

「だってー…仕方ねぇじゃん。
キスで留めただけかなり頑張ってんだけど俺。」

「あなたの理由なんて知らないわ。」

「だからー…あなたじゃなくて貴也。
結局2回しか俺の名前呼んでなくね?」

「咄嗟に出てこないのよ、その名前。」

「んじゃ、里穂のファーストキスを奪った責任取って、今日から俺、里穂の彼氏になります。でどう?」

「…ご自由にどうぞ。」

「マジ?え…マジで!?いいの?」

「…好きにすればって言ったじゃない。」

「ってことは里穂も…俺が好きなの?」

「…それは分からないけど。」


『好き』の感情がどんな色をしていて、どういう風に心に響くのかは分からない。
だけどたった一つ言えることは…


「さっきのキス…は嫌、じゃなかった。」

「マジー!?じゃあもう1回…。」

「調子に乗らないで。」

「だよなぁ…あ、じゃあキスしないからもう1個だけいい?」

「なに?」


彼はおもむろに自分のシートベルトを外した。
そして…



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