裸足のシンデレラ
「真姫、止めるなら今よ。」

「え?」

「あんな美人な人に告白されたら男の理性なんて呆気なく崩壊するものよ。
藤堂先輩って魔性の女だっていう噂もあるし、瞬を落とすためなら何でもするかもしれないわ。
真姫はいいの?瞬が取られちゃっても…。」

「そっ…それは…。」

「あのね、幼馴染は恋人に負けるのよ。
瞬に彼女ができたら真姫なんて無視されるんだからね?」

「え…?」

「瞬はああいう性格だから、絶対に彼女を一番大切にする。
もし藤堂先輩が瞬の彼女になったら、臆病な真姫は、その想いを伝えることすら出来ないわ。それでもいいの?」

「……。」

「とにかく行きなさい。行けば後悔しないから。」

「でもっ…。」

「行けば言いたい言葉なんて勝手に出てくるわ。早く行きなさい。」


…里穂の強い眼差しに勝てないのは前からだ。
あたしはそのまま教室を飛び出した。

嫌…だから。
藤堂先輩に取られちゃうのも、この言葉にしにくい想いを一生言えずに後悔することも。



* * *


「ちょっとクサい芝居しちゃったわ…。でも効果はあったかもしれないわね。
…今度瞬に何か奢らせなくちゃ。」




「さて…と、私も電話しようかしら。」


ピッ…プルルルル…


「里穂?里穂から電話かけてくるなんて珍しい!!すっげー嬉しいんだけど。」

「落ち着きなさいよ。ところで…今日は暇?」

「え?」

「伝えたいことがあるの。今日、どうしても。」



< 98 / 107 >

この作品をシェア

pagetop