*恋文戦線*
引きずられるように歩きながら、女子のパワーはやっぱり怖い…とひなは思う。
「一つ、条件クリアでいいよね?」
「へ?」
「"どこからどうみてもイケメン"らしいよ。」
クスクス笑いながら歩く性悪狐に溜め息をついた。
「…この糸目男め。」
「そんなこと言って良いの?チクっちゃうよ。」
ひなは思わず黙る。
ーー止めてクダサイ。
誰にとは言わなかったが、ひなは寒気がしてブルブル首を振った。
なんとなくその流れで一緒に通学路を歩くが、隣の男はそれがさも当然といった顔をしているのでなんとなく癪に障る。
「~~~っっ!!言っとくけどねぇ!!」
ひなはポニーテールを揺らしながらバッと道の真ん中で渡辺を指差し、もう片方の手を腰に当てた。
「まだ条件は4つも残ってマスからねぇ!ちょっと可愛い子ちゃんたちにもてはやされただけで調子こいてんじゃないよ!!だいたいっわた…」
聞いているのか聞いていないのか、それともただ呆れているのか良く分からない顔をしてひなを見ていた渡辺だったが、急に険しい表情をしたかと思うとひなに突進していく。
…え。
見る見る間に距離が縮まり。
「な、…」
何⁈っと言いかけたひなだったが、次の瞬間。
何故か渡辺に抱き締められていた。