*恋文戦線*
「時間と場所はまたメールするよ。じゃあね。」
え、とひなは目を丸くして周りを見渡す。
…気がついたら、家の前だった。
こんなところまで送ってくれていたとは。
ずっと喋ってたから気にしてなかった。
あれ?でも…と、ひなは思う。
……渡辺って方向こっちじゃないよね?
ひなはバッと顔を上げた。
やっぱり渡辺はまた来た道を戻り始めている。
半袖の後ろ姿がサァーと風にそよいで、晩夏にとても合っていた。
…道、違うのに。
「……優しいじゃん。」
ほんのちょっとだけ。
そう呟いてひなは玄関をくぐった。