*恋文戦線*


しかしひなはその約束をあっさり破る事となる。





「…ふべしっっ!!」

「馬鹿だねー。大会が遠くて良かったけど、気を付けなさいよ。仮にもエースなんでしょ?」

キャンキャン小言を降らせる母に、ひなは適当に返事をし、お粥をすすった。


「別にエースとかじゃないし…。ズルッ…」


母は三者面談の時の担任のお世辞をそのまま鵜呑みにしているのだ。

自分とどっこいどっこいの実力の子ばかりだ。

…負けたくはないけれど。

だからこんな風に風邪を引いている場合ではない。

練習がしたい。


「とりあえず良く寝ときなさいよ。あんたはアイスの食べ過ぎ。」

「はーい…。」

素直に返事をし、ひなは布団に潜り込んだ。

誰も居なくなった部屋の、木製の天井を見上げる。

壁には色気のない剣道のポスター。

微妙に下手くそにかかれた“目指せ全国!!”の半紙。

「全国は遠いな…。」

ため息混じりにひなはボフッと頭まで布団を被った。

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