*恋文戦線*
そういって渡辺はガサガサとレジ袋を漁り、ゼリー、アクエリ、冷えピタ、アイスなどを出し始めた。
「あ、お母さんには、これを。こんなので申し訳ないんですけど。」
そういって小さな和菓子を取り出す。
母は頬に手を当て嬉しそうに受け取った。
よりによって母の大好物、嶌田屋のコシ餡饅頭。(しかも限定モノ)
偶然か、それとも計算済みの行動なのか。
ひなは恐ろしいものでも見るように渡辺を凝視する。
「まぁ、なんて出来た子なの?渡辺くんは長男?」
「お母さん!!」
鈴鹿家は、みな、ひな、なな、の3姉妹なのだ。
両親は3人の内誰かが残ってくれればそれで良いと思っているので、この直接的な質問にひなは多いに焦った。
母は既に値踏みを始めている。
ひなは白眼を剥きたくなった。
「いえ、僕は次男で、家は兄が継ぐ予定です。」
「まぁまぁ…!大学はどこに行く予定なの?」
「はい、○○大の臨床倫理学科のスポーツ部を目指していますが、まだ行けるかどうか…。」