*恋文戦線*




「だぁぁぁあぁああもう、絶対勘違いされた。」

ファミレスの一角でクリーム色の机に両肘を着き、ひなは豪快に頭を抱えて下を向く。

最悪…最悪だ…と呟きながら揺らすポニーテールを渡辺は冷めた目で見つめ、ズズズズと遠慮なしに美味しそうなクリームソーダをすすった。

「彼女持ちになにを今更。」

「これとそれとは話が別っ。」

彼女を持っていようが結婚してようが、多田先輩は憧れのキャプテン様。とにかく先輩に変なところなんて見せたくない。

ぐにーっと眉を情けない八の字に曲げ、ひなはテーブルに頬を着けながらグラスについた水滴を見つめる。

そのまま視線を渡辺に移すと、相手は諦めたようにハァとため息をついた。

「…ちなみにどこがそんなに良いわけ?」

「聞く?聞いちゃう?よし、今夜はここで多田先輩の数々の素敵伝説を…」

「あ、いいや、やっぱりいい。」

プイッと不機嫌そうにそっぽを向く渡辺を、テーブルに頬をつけたまま見上げ、ひなは言う。


「そんなに私の事好き?」

「………、は?」

横を向いたまま、視線だけこちらに送りながら固まる渡辺に、ひなは負けじと見つめ返した。

見つめ合う事3秒。



渡辺は諦めたように息を吐く。

「………そんなに赤くなるなら、言わなきゃ良いのに。」

成功したかと思われたひなの反撃は、両刃のやいばだった。

自分の言った言葉に、時間差で顔を真っ赤にし、今度こそひなはテーブルに顔を埋める。

…やっぱ、言わなきゃ良かった。

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