願い事


「今すぐ帰って。もう2度と来ないで」


「稔...」


今にも泣きそうな目でうちを見てくる


うちは耐えれずに、背を向ける


きっと、そんな瞳でうちを見られたら


耐えれなくなって抱きしめたくなるから


智城には、うち以上に幸せになってほしい


うちは智城が好きだから


だから強くそう願うの


「...分かった。もう来ない」


決心したようにそう呟いた


「...送ってくよ、途中まで」


「ありがと」


智城がうちに向かって少し笑った気がした


ジャケットをまた羽織って、携帯をポッケに入れる


「あら?こんな時間に帰るの?」


お母さんがリビングから顔を出す


「うん。送ってくる」


「どうせならお泊りしない?」


「...は?」


この母は何を言ってる?


お泊り?


いやいや、何の関係もないコイツと?












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