言葉~ことのは~【短編】
中学生になるころには、私はもう蔵に入ることはなくなった。

どのように生活すれば母や祖母が喜ぶのか、どうすれば私は怒られずにすむのかということを学んだからである。  

私は母のいうとおりに生活していた。

母は素直に言うことを聞く私をたいへん気に入っていた。  


私は一種の操り人形であった。


そんな生活に不満がなかったわけではない。

私の身体は自分でつけた傷でいっぱいだった。

頭の中ではあの文字のことを考えるようになった。  


それでも私は自分の思っていることを誰にも伝えることはなかった。

母の前では「いいこ」を演じていた。


私を愛してくれる母を裏切ることは出来なかったのだ。  
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