言葉~ことのは~【短編】
体中が汗で湿っていた。

あの映像を見た後はいつもそうだ。

口の中がカラカラに渇いていて、
何か大きな考え事をしたときのように
頭の奥が重い。




あの文字の正体を知りたい。

   
何が書かれているのか

その文字を読んでみたい。




あの頭の中の映像を思い出そうとすると、
決まって胸の奥がずっしりと重くなる。


まるで鉛か何かを呑みこんなような、
吐き気を催すほどの重さ。




それでも考えずにはいられない。  




『きっとその文字さえ読めるようになれば、
私はこの塞がった心から解放されるのだ』

そんな気持ちが、

痛い胸とは反対に
勝手に映像を思い出そうとさせる。  

< 7 / 33 >

この作品をシェア

pagetop