鳴神の娘
「みな、今日はもう休んでくれ」
「陛下・・・」
ここはどこ?
家じゃないの?
私はどうしてここにいるの?
私の髪は、目は、どうしちゃったの?
誰か教えて。
誰でもいいから縋りつきたくて、すぐ側にいる男の人に泣きついた。
正常な状態なら絶対しなかった。
「助けて! 私、家に帰りたいっ・・・」
「姫・・・・」
「帰して・・・!」
この人に訴えたって仕方ないって、頭では分かっているのに。
体が勝手に動いた。
そっと肩に置かれた手が、暖かい。
「―――帰します。私が、どんな方法を使っても。けれど今はまだ、どうすればいいのか分かりません」
真剣な瞳が、熱く私を放さない。
「見つかるまで、私が貴女を守る」
「・・・・はい」
この人を信じてみようと思った。
名前も分からない男の人は、私を守ると言った。
それだけで、安心して眠ってしまった。
そして次の日の朝、和平の使者が殺されたと聞いた。