鳴神の娘
『―――私に、出来ることはありませんか?』
あることはある。
けれどアカリにそれをさせたくない。
それは、サリアも同じ気持ちだろう。
女性としては王国でおそらく一番の腕を持つサリアも、きっとこの少女に惚れた。
それは人を引きつけて離さないその容姿か。
それとも、アカリのその何気ない言葉なのか。
白金の髪に菫の瞳の少女は、特に美しいという容姿ではない。
体もグラマーが美人とされるこの国では、評価を受けにくい体型だ。
けれど、目が離せない。
そしてその言動。
それは朝、サリアがアカリに朝食を何にするか聞いた時だった。
『好き嫌いないです。皆さんが食べてる物を同じだけ下さい』
誰もアカリが一般兵と同じ物を食べるとは思っていなかった。
アカリは戦争を知らないという。
けれど、戦地においてそれがどれほど助かるか。
今戦っているラズニヤの君主がいい例だ。
戦地でも贅沢な食事を取り、気に入りの侍女を側に置くという。
そんな君主と、アカリ。
戦地で血と汗を流し戦う男が、どちらに勇気付けられるかは目に見えている。
アカリは知ってるのだろうか。
昨夜の現れ方、朝食での言動、その容姿を見た兵が彼女を何と言っているか。