狼かける吸血鬼<短>
「一回だけだからな」
私が承諾の言葉を口にすると、
『一生さっきみたいな偉そうな口たたかなくしてやるよ……』
ふわりと顔にかかった銀髪。
スルリと柔らかい指先が首筋を撫で、心地よさに息を洩らす。
と、途端に、
「いっ…!」
走る激痛。首に感じる、かたい感覚。
「う!あぁ…」
予想以上の激痛に、涙が溢れる。
笹木遥の喉がゴクリと動くのが近くで分かって。
今、確かに吸血されてるんだと分かる。
「んっ…?やっ、なんか…」
そして、ある時を境に、感覚が変わった。
……気持ちい…?
「やだ…!ちょ…待っ」
この感覚が逆に痛い時より怖くて。
気持ちいとか思ってしまった自分が嫌で。
「あ…ふぅ」
まるであの時聞いたような甘い声。
それが、自分の口から聞こえる。
「や、あっ…し…死ぬ…」
色んな事が限界に近づいた時、やっと笹木遥の顔が離れた。
「はぁ…は…」
私はふらふらで、自分一人で立ってはいられなくて、笹木遥にもたれてしまう。
『何だこれ…』
声が確かに元気になっている様子。
どうやら本当に私の血は効果あるらしい。
『すっげぇ旨い』
『もう一回…良い?』