世界が終わる前に
世界が終わる前に
プロローグ
私は何事にも“諦め”の早い、何とも臆病な人間だった――。
たとえば、同じクラスに大好きな男の子がいたとして。
その男の子の事を、私よりも地位の高い、クラスでも目立つ可愛い女子も好きだ、と言い出したとする。
見た目も中身も平々凡々の私なんぞに、その子と戦う上での勝機などないのは歴然で。
これが明らかに、私には“負け試合の恋”だと、誰から見てもわかるだろう。
でも。もしも、その男の子の事を私が、隣の席になれただけで幸せだと思えるくらい好きだったとしても、私は何の躊躇いもなくその男の子の事を綺麗さっぱり“諦める”だろう。
私という愚者は、いつも無理だ駄目だと思ったが最後――“試合放棄”をするのだ。
臆病者の私には、明らかに勝ち目の無い相手と戦うなんて選択肢など、端からない。
――どうせ私なんか。
これを口癖、いや、言い訳にして――私は今まで幾つもの事を“諦め”てきた。