世界が終わる前に


「でもさぁ、そうなると、どうして“あの”漆原黒斗があんたを条件に出したのかってのだけがマジで謎なんだよねぇ……あんたあいつ絡みに知り合いでもいるの?」



不思議そうにそう呟いた由紀ちゃんは、こちらに疑問を孕んだ視線を向けた。


急に視線を向けられてびっくりした私は、慌てて首を横に振って否定した。


知り合いなんかいない。

検討もつかない。



「だよね、んなわけないか」


「……」


「とりあえず、漆原黒斗はあんたみたいなのの手におえるような男じゃないってのは、わかってんの?」


「……あの人って、そんなに悪い人なの?」


「悪いも何も、ここらじゃあいつが一番だよ」


「……一番?」


「まあ、詳しく言えばここらを仕切ってんのは瀧川中の連中なんだけど。そん中でもあいつが瀧川中で番張ってんのよ」


「……」


「あいつイケメンだし、そりゃケンカも強ければ有名になるでしょ」



普通に、と。由紀ちゃんは至極当然のように言った。







……でも、ここまでが、私のちゃんと覚えてる由紀ちゃんとの最後の会話だった。


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