世界が終わる前に
そんな私は、きっと。
彼に淡くも儚い“恋”をしていたんだと思う。
それは、恋と呼べる程、確かでなく不確かで不完全な気持ちで、未完成な恋心。
ハチミツもホイップも乗ってないホットケーキのような恋。
それでも忘れる事を許さないとでも言うように、日々雪のように降り積もってゆく想いだけが、私を雁字搦(がんじがら)めに苦しめていた。
多分、あの日――彼と図書館に行かなければ、麻子ちゃんや由紀ちゃんから“噂”を聞かなければ、私はちゃんといつも通りに彼の事も忘れられていたんだと思う。
それに、あの日は、ここ数年間会話すらしていなかった兄と奇跡的に会話もした、というのも一理あるから何とも皮肉だ。
私は、あの日を後悔せずにはいられなかった。
諦める事には慣れている筈なのに、どうにも最近の私は諦めが悪いように思えて酷い自己嫌悪に陥った。
それは、長年培ってきたものを、一気に崩されたような壊されたような、酷く憂鬱な気分だった。