世界が終わる前に


しかし…――気がつけば、もうあれから一ヶ月という月日が経っていたのは事実で。


十月に迎えた衣更えで、半袖だったセーラー服も長袖に変わり、灰色の街には少し冷たい秋風が吹き付け始めていた。


何の変哲もない、十月上旬だった。


その日も、いつもながら私は塾で英語の講義を受けていた。


黒板に綴られていく英文を細かにノートへと書き写し、若い男性講師の説明に必死に耳を傾けた。




それから帰りの身支度をする頃には、もう窓の外はすっかり真っ暗闇に包まれていた。


窓から見えるオフィス街の僅かな明かりと、少し遠くの繁華街のネオンが暗闇に揺らめいて、夜独特の雰囲気を醸し出していた。



漆黒に染まる夜空には、妖しく浮かび上がる下弦の月と瞬く幾多の星たち。


目に映る景色は、とでも幻想的で非現実的だった。


混沌とした世界の不明瞭な現実が今の私には、酷く寂れて見えていた。


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