世界が終わる前に
姉もそれなりに優等生だったけれど、そんなのと比にならないくらい兄は優等生だった。
それを裏付けるのは、やはり兄の輝かしい“学歴”で。
その事をまだ幼かった私が認識しはじめ、今まで同じ世界にいると思っていた兄が、別世界の住人なのだと理解したきっかけは、兄が小学受験をした時だった。
当時…――超難関と言われていた程、有名進学校だったエスカレーター式の私立男子中学。
そこに、優等生だった兄は、難無く入学を果たしてみせたのだ。
合格発表の日なんて、普段は静かな我が家がお祭り騒ぎになったくらいだったし、母も父もそれはそれは泣きながらに兄の合格を喜んだ。
そして、そんな兄の優等生っぷりは、母の熱心過ぎる“教育”にさらに拍車を掛けた。
だから私にとっては、ただの傍迷惑に過ぎなかったのだけれど。
それからも至って品行方正だった兄は、母だけでなく父からもその大きな我が家の期待を一心に受けていたのだ。