世界が終わる前に
諦められなかった“想い”。
まだ未完成な“想い”。
意識した途端、更なるドキドキが胸を襲った。
黒斗くんを手当てする指先が、小刻みにぷるぷると震えた。
もう、どうしようもない。
きっと後戻りは、出来ない。
不思議と由紀ちゃんの時に感じたような背徳感は、なかった。
ううん、そんなのはただの気休めだってわかってる。
…――きっと、誰にも止められない。
それから手当てを一通り終えた私は、それらを通学鞄に詰め込んだ。
「なあ、」
「うん?」
「ケータイ、」
さっきまでそっぽを向いていた黒斗くんの視線が、今はしっかりとこちらをジッと見据えていて、ドキッと心臓が音を立てた。
「……携帯?」
「ああ」
「え、何?」
「出せよ」
ちょっと……いやかなり強引な言い方だけど、不思議と不快には思わない。