世界が終わる前に
それは、きっと、黒斗くんが優しいヒトだって知ってるから。
不器用なヒトだって知ってるから。
私は「あ、うん」と鞄から携帯を取り出すと、黒斗くんに差し出した。
なんの飾り気も女っ気もない、オフホワイトの携帯。
ストラップすら付いてない私のそれを、黒斗くんは何も言わずに受け取ると無遠慮にパカッと開いた。
もう黒斗くんが何をしようとしているのか、恋愛経験もろくにない私にだってわかった。
俗に言う“アドレス交換”とかっていうヤツだ。
少しドキドキしながら、横で私の携帯を持ちながら自分の携帯を取り出した黒斗くんを見ていると、器用に自分の携帯を操作していた黒斗くんが、ふと何かに気づいたようにその動きを止めた。
「……犬?」
「へ?」
「犬……飼ってんのか?」
言いながら黒斗くんが、私の携帯画面をこちらに向けて来た。
そこには、待ち受けにしてある愛犬のチロが写ってて、