世界が終わる前に
「あ、うん、飼ってるよ!可愛いでしょ?」
慌ててそう言うと、黒斗くんは驚いたのか目を丸くして、私の言葉に反応せずもう一度、画面の中で小さな舌を出しているチロを見た。
…――チロは、クリーム色のチワワで、私がちょうど小学六年生の時に友達の家で見たチワワを羨ましがって、駄々をこねてお父さんに近くのペットショップで買ってもらった。
でも、チロの可愛さに私が構いすぎた所為で今では、何故かお兄ちゃんに一番懐いちゃってるのは内緒。
ちらっと横にいる黒斗くんを見てみたら、黒斗くんは画面の中のチロを見ながら柔らかな笑みを浮かべていて。
そんないつものクールとは掛け離れた雰囲気を放つ黒斗くん見て、思わずチロ相手に嫉妬しちゃったのも内緒。
でも、穏やかな横顔がとても可愛くてずっと見てたいって、思っちゃったのも……黒斗くんには内緒だ。
「あ、あのね、チロっていうの」