世界が終わる前に
正直、羨ましかった。
何でもかんでもそつなくこなしてしまう、優等生で容姿さえも完璧だった兄が……私は羨ましくて仕方なかったんだ。
近所でもそれはそれは評判だった兄は、四方八方から敬われ、私の友達からも賞賛され、赤の他人からさえも羨ましがられるほどの絶対的な存在だった。
でも。
その時、私は思ったんだ。
……いや、悟った。
私と兄とでは、住む世界からして違うのだという事を――。
遺伝子が同じなだけに、始まりは同じ世界の住人だった筈の兄は、今や“みにくいあひるの子”の私からしてみれば別の世界にいる住人で。
最早他人同然なんだと――。
そんな出来損ないの私の中に芽生えた感情は、焦燥感や劣等感なんかじゃなかった。
――“寂しい”だった。