世界が終わる前に
あれ、でも……体に悪いよ、とかそれくらい言った方が良かったのかな?
……でも、煙草も煙も好きじゃないのは確かだけど、黒斗くんなら許せてしまうのが本音で。
むしろ、その煙草を吸う横顔がめちゃくちゃかっこいい、なんて思って見とれちゃう私は完全に恋する乙女になりつつある……。
「……あんたは?」
「え?」
深く吸い込んだ煙を綺麗に吐き出した黒斗くんの視線が、またこちらを向いた。
「兄弟とかいねェの?」
「あ……えっと、」
いるよ、とすんなり答えられなかった私はやっぱり弱くて狡い。
「……いない、よ」
気づいたらそう口走ってた。
だけど、怖かった。
黒斗くんにだけは、お兄ちゃんやお姉ちゃんと比べられたくなかった。
「……いない?」
「うん、一人っ子。だから、黒斗くんお姉さんいて、羨ましい」
そう言って曖昧に笑った笑顔が引き攣ってしまっていないか、不安だった。