世界が終わる前に


そして、黒縁眼鏡の奥にある冷淡な瞳と視線が交わった瞬間、ピリッとした緊張感が、私の全神経を欹(そばだ)てさせた。



「お兄ちゃん……な、に?」



何となく、不穏な空気を漂わせるお兄ちゃんに、私には何となく予感めいたものがあった。



……もしかしたら、黒斗くんと一緒にいるのを見られてしまったんじゃないか、という予感が。



私の問いに、ハァと深い溜め息を吐き出したお兄ちゃんが、あきらかに気に食わないと言いたげな様子で「…――お前、」と口を開いたから、咄嗟に怒られると思って、ギュッと固く目を瞑った。



しかし――…


飛んでくると思った怒号は一向に聞こえてこなくて、不思議に思いながら恐る恐る瞑った目をそろりと開けた。



「……懐かしい、な」



穏やかな低音が耳に届いて、薄目を見開くなり、フッと柔らかく綺麗な微笑を浮かべたお兄ちゃんに驚きのあまり絶句した。


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