世界が終わる前に
「ん?」
目を細めながら、コルクボードの写真を眺めていたお兄ちゃんの瞳が、ゆっくりと私を捉えた。
「こ、この写真撮った時!」
「……撮った時?」
キョトンとした表情が訝しげに歪められ、真っ直ぐこちらに向けられていた瞳は、すぐに怪訝を孕んだ瞳に掏り替わった。
「そう。その、旅行先でさ、私がま、迷子になっちゃったの……お兄ちゃん、覚えてる……?」
我ながら何とも微妙な話題を振ってしまい、失敗した感が拭えない。
けれど、
「あー…そういえば、そうだったな。お前、俺と一緒いたのに気づいたらいなくなってた」
そうお兄ちゃんが何事もないように、至って普通に言葉を返してくれたから、私のボルテージは一気に上がってしまった。