世界が終わる前に


「そう!覚えてたんだ!確かあの時、変なオジサンが私に飴をくれるって言ってくれたから……だから、着いていっちゃったんだんだけど!でも、途中また、そのオジサンとも逸れちゃったんだけどね!」


「お前なあ、仮にも誘拐されかけたんだぞ?……明るく話すなよな」



溜め息混じりにそう言ったお兄ちゃんは、「……ったく、お前は」と心底呆れてるって表情を浮かべながら呟いた。



「で、でもさ!その後、ちゃんとお兄ちゃん、私の事探し出してくれて、二人で一緒に海見ながらアイス食べたよね!」


「お前……すげえ、記憶力だな」


「だって!楽しかったもん!アイスおいしかったもん!」


「俺は、真夏のビーチを二時間も這いずり回って、お前を探してたんだぞ?」


「うっ、」



痛い所を突かれて、何だかとても申し訳なく思った。


だけど、それでも私にとっては、良い思い出だった。

お兄ちゃんが二時間も掛けて迷子の私を探し出してくれた、私の大切な思い出だから。


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