世界が終わる前に


それでもやっぱり、あの時の自分の幼さ故の浅はかな行動に自戒の意を込めて謝ろうとした。


けれど、息を吸い込んだ瞬間、先程よりも表情を和らげたお兄ちゃんが、吸ったばかりの息を飲み込むような台詞を吐いた。



「……まあ、今思えば。あれも良い思い出だけどな」



その言葉に全身が震えて、胸が心地好くキュッと締め付けられたのと同時に、涙腺が一気に緩まるのを感じた。



「……本、当?」


「ん?」


「本当に?本当にそう思ってる?」


「何だよ、奈緒。急にどうしたんだ?」


「いいから……答えて」



そうか細く呟いた声は、意に反して震えていた。


何だろう……。

でも、どうしても、真偽を確かめたかったんだ。


もしかしたら、このお兄ちゃんの答えで、変わるかもしれない。

家族を繋ぐ世界が、変わるかもしれない。


もう繋がれないと諦めていた私とお兄ちゃんの世界が、繋がるかもしれない。


そう思った。


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