世界が終わる前に
そして、お兄ちゃんが薄い唇を開くと同時に、私は思わずギュッと固く目を瞑った。
「ああ……思ってるよ。つか、忘れたくても忘れらんねえし」
真剣に、だけど、後半は少し笑い混じりにそう言ったお兄ちゃんの柔らかい低い声に、私は瞑っていた目をゆっくり開けた。
それからやっぱり穏やかな表情で少し照れ臭そうな優しい笑みを浮かべたお兄ちゃんが「奈緒との思い出は、忘れねえよ」と言ったその言葉を一生忘れない、と心にそう強く思った。
諦めなくてもいいのかな?
私たちの世界は、繋がれなくなんかないんだって……そう思っていいのかな?
ずっとずっと、心の奥底にあった蟠りがスッと消えてゆくのを感じた。
「……お兄ちゃん、あのね?」
「ん?」
「私……またお兄ちゃんと一緒にアイスが食べたい」