世界が終わる前に
真っ直ぐにお兄ちゃんを見据えたままそう言った私の台詞に、お兄ちゃんの瞳が一瞬大きく開かれて丸くなった。
――少し、その表情が黒斗くんと似てると思った。
そして次の瞬間、お兄ちゃんはいつになく嬉しそうな表情でスッと瞳を細めると、力無く笑った。
「……アイス食うには、もう季節外れだろ?」
「いい!いいの!アイス食べたいの!今週の土曜日ね!」
「は?土曜日?」
「絶対行くもん!」
「おい、奈緒?」
「絶対絶対行くから!」
「奈緒……聞け」
喚く私を、諭すように低く呟いたお兄ちゃんの声に、ハッとして思わず俯いた。
私ってば、いきなり……何、言ってるんだろう。
勝手に勘違いして、調子乗って我が儘を言った自分に吐き気がした。
私にとっては、嬉しい事でも……やっぱりお兄ちゃんにとっては、迷惑なのかもしれない。