世界が終わる前に


「……な、なに?」



恐る恐る俯いたまま、震えた声をお兄ちゃんに投げ掛けた。



「……たら」


「え?」


「俺と奈緒の受験が終わったら、な?……一緒に食いに行こう」



予想外のお兄ちゃんの答えと、その穏やかな表情に思わず涙が出たけど、慌てて唇を噛んで引っ込めた。



「う、うん!絶対行く!受験頑張るから!」


「一応、言っとくけど、落ちたら無しだからな?」


「えー!絶対落ちないもん!絶対絶対頑張るんだから!」


「おう。頑張れよ、奈緒。……俺も頑張るから」


「うん!ありがとうお兄ちゃん!お兄ちゃんも頑張ってね!約束ね!」


「ああ、約束……な」



言いながら照れ臭そうに笑ったお兄ちゃんの、その表情を、私は永遠に忘れないだろう。


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