世界が終わる前に
このくだらない世界に鮮やかな色がついて、私は何だか世界から愛されているような、そんな今までに感じた事のない幸福感に酔いしれていた。
長く留まっていた雨雲が晴れたような、そんな晴れ晴れとした気分のまま、私は意気揚々とリビングへと続く階段をバタバタと駆け降りた。
偶然にも開校記念日で中学校が休みの今日は、平日の我が家には私一人きりだった。(チロもいるけれど。)
勿論お父さんは言うまでもなく仕事で、お兄ちゃんとお姉ちゃんは学校。
お母さんは、何やら最近主婦友達との友好活動に精を出しているらしく留守だった。
誰もいない静かなリビングを足早に通り過ぎ、私は奥にある浴室へと向かった。
今日は、久しぶりに行きつけの美容院に行って、暫く放置していた可哀相な私の髪の毛を綺麗にでもしに行こう――…と、実は昨日寝る前に密かに計画していた私は早速行動に出た、という訳だ。