世界が終わる前に
素早く全身を洗って物の数分で浴室から出た私は、髪の毛を乾かしてからリビングへ戻ると、ラップの掛けられた冷たい朝食を食べた。
いつもは好きじゃない独りの空間も、何故か今は平気だ。
開校記念日というオプションも手伝ってか、気分は上々だった。
ついには鼻歌まで奏で始めた私は、お腹を空かしてクウンと切なく鳴いたチロにドッグフードをあげると、至って軽い足取りで家を出た。
当日予約でも融通の効く地元にある通い慣れた美容院は、郊外にしては値段が少し高めだけれど、小洒落た店内の雰囲気と落ち着いた店員の、のほほんとした接客トークが気に入っている。
がらがらの店内には、私と年齢不詳の女性客しかいなかった。
重かった髪の毛を軽めにカットして貰い、仕上げのトリートメントが終わった頃にはすっかり私は上機嫌だった。