世界が終わる前に
「あら、もしかして奈緒ちゃん図星だったのかしら?」
してやったり、とでも言いたそうな、得意げな表情で妖しくニヒルに微笑んだ木下さんは、何だかとても楽しそうだ。
いや、確かに昨日は黒斗くんの事でも嬉しい事があったんだけれども!
ていうか……そういえばお兄ちゃんの事ですっかり忘れちゃってたよ!
そう思って、昨日の出来事をふと思い出してしまったら急に顔に熱が集まって、顔だけでなく全身がカァッと熱くなった。
「……きっ、木下さん、あまり中学生をからかわないで下さいっ!」
「失礼ね、からかってなんかないわ。ただ……ちょっとした好奇心よ、ふふ。あ、こういうのがダメなのかしら?」
言いながら巻き終わった私の髪にワックスを着けて、毛先を遊ばせながらふわふわにセットしてくれいる木下さんの器用な指先を眺めた。