世界が終わる前に
「…――も、もしもしっ」
緊張のあまり、思ったよりも大きな声が出てしまったのを、早々に後悔したのも束の間で――…
『……声デケェよ』
「あ!ご、ごめんなさい!」
……しまったぁ!
興奮し過ぎちゃった!
電話越しに不機嫌そうな声を出した黒斗くんに、言葉と一緒に一人きりのリビングで頭まで下げてしまった馬鹿な私を、とことこと近寄ってきたチロが不思議そうに見つめていた。
『いや、別に。……つか、今何してんの?』
電話越しに聞こえてくる、いつもより少し低い黒斗くんの声にすごくドキドキした。
初めて交わす電話越しの会話に携帯を持つ手が、無意識にぷるぷると小刻みに震えてしまっているのが嫌でもわかる。
だけど、直接話す時よりも、耳元からすぐ聞こえてくるいつもと違う黒斗くんの低い声が、私の心臓を鷲掴んだ。