世界が終わる前に
賽は投げられた
中学校生活最後の夏休み。
私は、それの大半を塾の夏期講習に費やした。
来春に控えた受験勉強も、いよいよ本腰を入れて取り組まなきゃならない。
……なんて、そんな事、考えただけでも憂鬱極まりない。
受験なんかこの世から消えてしまえばいいのに……と、思わずにいられない。
いや……普通にこんな事を思ってるのが、ボスにバレでもしたら大変なんだけど。
『皆さん、有意義な夏休みを過ごされましたか?三年生はいよいよ高校受験が間近に迫ってまいりましたね――…』
九月の第一月曜日。
新学期を迎えた今日、私たち無力な生徒は狭苦しい体育館へと詰め込まれ、全くもって身の引き締まらない始業式に耐えるのだ。
壇上で老眼鏡を上下させる女校長の退屈な長話を、右から左へ聞き流しながら、込み上げてくる欠伸を必死に堪(こら)えた。
たくさんの生徒でぎゅうぎゅう詰めにされ、まさに蒸し風呂状態の体育館の熱気にだらだらと全身から大量の汗が流れ出し、休み中にクリーニングしたばかりのセーラー服に染みを作った。