世界が終わる前に


「あ、そういえば黒斗くんは学校だよね?今お昼休み?」


『……いや、俺んとこも今日休み』


「え!そうなんだ?嬉しいね!」


『あー…まあ……つーか、』



何となく歯切れ悪そうにボソボソと話す黒斗くんの声が、少し弱々しく感じて不思議に思った。



「うん?」


『いや……あんた今、家いんの?』


「え?あ、うん」


『ヒマ?』


「あ、うん……」



え……あれ?

い、今、何て……?



『なら今から迎え行くから待ってろ』


「……へ?」



――思考が完全に止まった。




じゃあな、というぶっきらぼうな言葉を最後に電話は一方的に切られ、耳には無機質な機械音だけが聞こえていて、チロの鳴き声にハッと我に返った私は深く考える暇もなく、慌てて準備に取り掛かった。


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