世界が終わる前に


黒斗くんと出会ってから初めて知る気持ちがたくさんある。

初めて知る新しい自分がたくさんいる。


それはきっと、私がどうしようもなく黒斗くんを好きだから。

止まらないくらい黒斗くんに恋をしているから。



『素直が一番』

ふと木下さんのそんな言葉を思い出した。


この気持ちには素直でいたい。


そう思って、タイミングよく鳴った携帯を手にした。

案の定ディスプレイには【漆原 黒斗】の表示。


私は溢れ出す想いを胸に、バックを掴んで玄関へと向かった。








鳴り続ける携帯を片手に焦る気持ちを抑え外へ飛び出すと、片手で携帯を耳に当てている黒斗くんがいた。


すぐにこちらに気づいた黒斗くんは、ゆっくりと携帯を耳から離すとそのまま挨拶代わりなのか力無く片手を上げた。


…――だけど、自分も今日は学校が休みだ、と言っていたはずの黒斗くんは、何故だか学ランを着ていて。


なんで……制服?


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