世界が終わる前に
そう思い挨拶もせずに駆け寄った私は、背の高い黒斗くんを見上げながら言った。
「黒斗くん……どうして、制服なの?」
「え?……あー…悪い、」
ぎこなく戸惑い気味にそう言った黒斗くんは、何故かバツが悪そうに表情を歪めた。
「うん?」
「……アレ、嘘」
「嘘……?」
一瞬、その言葉の意味が理解出来なかった。
「……学校休みってヤツ、」
酷く申し訳なさそうに言葉を詰まらせた黒斗くんは、背の低い私を悔恨を孕んだ瞳で見下げた。
「えっ……そうなの?」
「ああ……悪い、ホントは途中で抜けてきた」
無表情の中に見える黒斗くんの素顔は、不良とは思えない程に素直な少年だ。
きっと学校を途中で“抜けた”という事は、言い換えてしはえばそれは“サボった”という事で。
そのくらいは、この私にでもわかる。(まあ一度もサボった事なんてないんだけれど……。)