世界が終わる前に


そう思い挨拶もせずに駆け寄った私は、背の高い黒斗くんを見上げながら言った。



「黒斗くん……どうして、制服なの?」


「え?……あー…悪い、」



ぎこなく戸惑い気味にそう言った黒斗くんは、何故かバツが悪そうに表情を歪めた。



「うん?」


「……アレ、嘘」


「嘘……?」



一瞬、その言葉の意味が理解出来なかった。



「……学校休みってヤツ、」



酷く申し訳なさそうに言葉を詰まらせた黒斗くんは、背の低い私を悔恨を孕んだ瞳で見下げた。



「えっ……そうなの?」


「ああ……悪い、ホントは途中で抜けてきた」



無表情の中に見える黒斗くんの素顔は、不良とは思えない程に素直な少年だ。


きっと学校を途中で“抜けた”という事は、言い換えてしはえばそれは“サボった”という事で。


そのくらいは、この私にでもわかる。(まあ一度もサボった事なんてないんだけれど……。)


< 173 / 202 >

この作品をシェア

pagetop