世界が終わる前に
「なんか……あんた、今日いつもと違ェから」
言いながら黒斗くんは、無遠慮にまじまじと背の低い私の顔を覗き込むから、近づいた距離と顔の近さに踊り出した心臓が飛び出そうになった。
でも、そういう事に疎(うと)そうな黒斗くんが、そんな私のちょっとした変化に気づいてくれた事がすごく嬉しい。
お化粧とお洒落を頑張って本当に良かった。と、私は内心酷く安堵した。
「あの、ど、どこに行くのっ?」
どうやら目的地らしい駅のプラットホームに降り立ち、人混みで混雑する改札を抜け出した時、何かを探すかのように辺りを見渡す黒斗くんにそう言った。
「ん?……ああ、あそこ」
「……え?」
黒斗くんが「あそこ」と指差したのは、大きな建物だった。