世界が終わる前に


静かな館内に入るとちょうど上映が始まったばかりだった。


暗がりの中、視界の悪さにこけそうになって思わず目の前の黒斗くんの学ランの袖を掴んでしまった。


「あ!ごめんなさい……」


「大丈夫か?」



そう言って少し乱暴に繋がれた手に、緊張感が増して心臓がうるさくなった。



「あ、あの、」


「危ねェだろ。我慢しろ」



冷たい言葉とは裏腹に黒斗くんの左手は驚くほど熱くて。

私は大人しく黒斗くんのその手をギュッと握り返した。


男の子とこんなふうに手を繋いだのは初めて。

男の子と二人きりでプラネタリウムに来たのも、もちろん初めて。



「座れよ」


「あ、ありがとう」



そんな初めてばかりの相手が黒斗くんでよかった、と。


改めて強く、強く思った。


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