世界が終わる前に


「案外、退屈じゃなかったな」



プラネタリウムから出るなり、酷く意外そうにぼそりとそう呟いた黒斗くんの台詞に思わず動揺した私は「え、あ、うんっ!そうだね!」と不自然に吃(ども)ってしまった。


まさか……黒斗くんばかり見ていて、肝心なプラネタリウムの内容は全く覚えていない、だなんて口が裂けても言えないだろう。






「…――メシ食おうぜ」



腹、減った、といつかと全く同じ台詞を吐き出した黒斗くんは、そのままスタスタと平日で比較的空いている歩道を歩き出した。


そして、私もそれに続くように「あ、うん」と返事をしてから、先を行く黒斗くんの隣に並んだ。


自然と合わさる歩調に、黒斗くんの優しさを改めて実感した。


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