世界が終わる前に
けれど、残念ながら黒斗くんには聞こえなかったのか、それとも敢えて聞こえなかった事にしてしまったのか、彼は不快そうに眉間に皺を寄せるなり「行こうぜ、」と再び歩き出した。
でも――…
「ちょっと!クロト、あんたあたしをシカトする気なわけ!?」
目を真ん丸くしていた女の子は急に声色を変え、ずんずんとこちらに近寄って来た。
「……あの、黒斗く、」
あまりの迫力に、私は思わず先を歩く黒斗くんを呼んだけど、
「このハセガワマオ様を忘れたなんて言わせないわよ!」
私なんて眼中にないらしく、その子は息を切らしながら私たちの目の前まで来て通せん坊をし、鋭い形相で黒斗くんを睨みつけながらそう吐き捨てた。